π のn乗根近似の観察日記

≪1≫ いつの時代も万人を魅了しつづける円周率 πさん。愚生のふるいノートに、これの近似値についての書き込みがありましたので、本日はこれを今風にリメイクして書き留めておきたいと思います。当時はなにかべつのキッカケがあったかも?(数学雑誌で関連記事が載ってたーとか)ですが、手書きのノートには「平方根・立方根とかの数表をながめていて…」となっていました。此れ即ち観察数学。

    

 

 

≪2≫ π の近似値といえば、まずは 22/7 とか 355/113 が定番ですが、もひとつ √10 というのも有名。この √10 は、むかしむかし中国の張衡(ちょう こう)さんという方が言い出したんだとか。

 近似のぐあいを表すのに、まえにも使いました「小数点以下何桁まで数値が一致しているか関数g(a) 」で表しますと、先ほどの近似ぐあいはつぎのような感じですね。(gとかは自家製記号です、念のため)
    g(22/7)  =g(3.14285・・・)     =2
    g(355/113) =g(3.14159 29203 ・・・) = 6
    g(√10)   =g(3.16227 ・・・)    =1

 「平方根なら僅か1ケタしか一致していないとおっしゃる。これはさみしい。それでは、立方根とかではどうなの?」と思うのは正しい考え。

 そこで、カタカタっとやると (3)√31 (ちいさい (3) は、立方根の意味ですね) が出てきて、
    g((3)√31)  =g(3.14138 ・・・)   = 3
となって、精度は3となり少々アップとなりますね。

 

≪3≫ さらにコトを進めるにあたり、n乗根で最良近似となる正整数をan としましょう。するってーと、上記の結果は、a2=10、a3=31 となります。また、a1=3 としておきます。
 この数列{an }は、天下の数表OEISさんにはA002160でちゃんと登場されていまして、
    3,10,31,97,306,961,・・・
とのことであります。これは、πのn乗に「最も近い」整数とのことですが、整数を採用する場合に切り捨てるのかあるいは切り上げるのかについては、ビミョウです。ここのところOEISさんにでは、床関数・天井関数としてA001672 (床(Pi^n))、A001673 (天井(Pi^n))もありますので3列にして観察してみます。きいろの着色部は、「最も近い」に採用されている側の候補であります。

    

実際にn乗根を計算し、π との差をみてみますと、

    

フロア側か天井側かは、上記の「最も近い整数」とは一致しているようですが、右にいったり左にいったりと規則性はナシと見受けます。π の性格からしてこれはずっと続く?



≪4≫ このほか、以下のことが観察されます。

    ・精度自体については、単調減少とはいえない。
     実際のところ、n=4,6,12,16、…では悪化している。たとえば、
        g((3)√31)  =g(3.14138 ・・・)   = 3 
        g((4)√97)  =g(3.13828 ・・・)   = 1 ・・・アッカ
     
    ・軽微な注意ですが、n=4のばあいの97のつぎの98では
        g((4)√98)  =g(3.146346 ・・・)    = 2
     となって桁数一致度関数gでは 98のほうがマシにみえますが、
        |(3)√97-π|=0.0033 …
        |(4)√98-π|=0.0047 …
     となり、(3)√97のほうが最適な近似値といえます。

    ・あるnから先では単調減少かというと、πの超越性からして、たぶん、
     そうではない?

    ・公比 an+1/an は、極限値 π に収束するようだ。これは
     「鳩ノ巣原理」風論議で説明が着きそう。

      

          an+1/an → π のようす

 

 

≪5≫ ふろくですが、今回の観察のとちゅうで次のようなものにも出会えました。
(=は ≒ のイミです...)

     (g=3)

      (g=4)

     (g=5)

 以上のような数値観察の旅は費用もかからず、前期高齢者のボケ防止には最適なもののひとつではなかろうかと思ったりしております。

 

本日も、ご静読ありがとうございました。

 

参考

OEISさん、Wikiさん

      

 

ultra図形は、よい図形である

≪1≫ 平面図形でその面積と全周長が、数値的に一致するような図形を、戸村先生は 「超図形」(ultra図形)と命名されました。[1]ここでは、n次元の場合の「超球」とかの呼称と紛らわしいので「ultra」を使用したいと思います。

 たとえば、一辺の長さが4である正方形では、面積は4^2=16、全周も4×4=16となり、これが「ultra正方形」となるわけです。

 同様に「ultra円」を探してみると、半径をrとして、πr^2=2πrから、r=2が該当することが分かります。

 いま求めた「ultra正方形」と「ultra円」を重ねてみますと、両者は「接している」ということが観察できるわけです。

    

 

 

≪2≫ では、立体ではどうか?と思うのは自然な発想。で、立方体では、面が6個あることなどから、aの方程式

    

の解としてa=6が該当。他方、球では中学生必須の暗記式の登場でrの式

    

の解でr=3が出てくる。ここでも、やはり両者は接していることが分かります。

    

   

 

 

≪3≫ 一般のn次元における立方体と球ではどうなっているのか?と思うのは至極自然な発想。立方体のほうは式

    

より、一辺a=2nのときに;いっぽう球のほうは(いささか牛刀っぽいですがby Wolfさんから)式

    

の解で、半径r=nのときに両者がultraになり、このときa=2r;すなわち    「一辺=直径」となり、両者はやはり「接している」ことになります。

    

 (・・・4次元の球って、こんなんでしたかね?)

 

 

≪4≫ いきなりn次元に行っちゃいましたが、ちょっともどって、平面の正多角形の世界ではどうでしょうか?

ここでも一辺の長さがaのultra正n角形は、面積=周長の式;

    

から一辺a=4tan(π/n) となります。(cotはtanの逆数)このときの「辺芯距離」(by Wolfさん用語、ふつうには内接円の半径)は一般に

    

とのことですので、これに先ほどのa=4tan(π/n) を代入しますと、nにかかわらずいつも2、すなわちultra円の半径と等しくなり、いつも(正なに角形であっても)「接している」ことが観察されます。

    

 

 

≪5≫ ここまできますと、(5個しかないといわれる)正多面体ではどーなっているのかと気になるのが、いけないクセです。ここでは恒例のWikiさんに活躍いただき、体積や面積の式を活用させていただきたいと思います。

ja.wikipedia.org

 ここでも同様の計算でもって、r=3のultra球には、どんなultra正多面体も接していることが分かります。計算の方針は以下の通り。

    1.体積=表面積の方程式から、ultraの場合の一辺の長さaを求める。

    2.内接球の半径の式に、上記のaを代入する。

    3.半径を計算すると、5つともr=3となる。

      (正12面体のときは計算がややメンドウですが…)

 たとえば、ultra正20面体は、一辺a=3.96950…のときで、

これはr=3の球に接している、、、。(このa=3.96…は代数的数です、念のため)

    

    

つまり総じて、ultra図形は、よい図形である、といえると思うんです。

 

本日もご静読、ありがとうございました。

 

 

参考書

[1]戸村浩、超平面‐円、数学セミナー3-77、TOMのページ、日本評論社

[2]ほか、数学セミナー2-77,5-77,3-79など。

   もろもろの発端は[1]です。

[3]上掲のWiki、Wolfご両名。 いつもありがとうございます。 

 

改定

2024.02.16 図がみにくかったので明確化、文章も少々見直しました。   

 

はさまれた狭い領域


≪1≫ 前回までは、「ぎりぎりくっ付きそうだがわずかに離れている2つのグラフ」というもの、つまり地図で言いますと陸地と陸地が接近している「海峡」みたいなのを探索しましたが、今回は逆に「わずかに交わってしまっているグラフ」というのを対象にしてみようと思います。物騒なタトエですが、尖閣竹島のように複数国が所有権を争っているみたいな。。。

 

≪2≫ 一番手のは、昨年(2022-09-03)の記事にも登場いただいた三角関数グループからの2関数; y=sinx と y=arctan です。

    

    

 原点以外の交点は、目視観察ではsinの最大点x=π/2=1.57079…か少し過ぎたあたりかともみえますが、実際はすこし手前のx=1.55708…とのことです。(OEIS A348293,4)せっかくですので、少々寄り道しまして、このあたりをもっと拡大してみましょう。みずいろがsin赤がarctanです。垂直線 x=π/2 とのあいだで、微小なデルタ地帯が観察されます。

 交点を x1 としまして、原点から xまでの面積は S=0.04483…、また x1 からπ/2までの小デルタ地帯の面積は S=0.00002 64732…となるようです。(いづれもOEISには見当たらず、、、)

 余談ながら図形的に解釈しますと、xが1.55708…ラジアンのとき、次の図でみずいろの部分Aと、赤色の弧長Bの長さが一致しますよーという感じですね。

    

 

≪3≫ つぎも、以前の記事で登場しました y=√x  と y=x!というものです。(2022-07-24) 先ほどの例もそうですが、同じようなグループ内のシンプルな関数が、微妙に交わっているというのがシビレます。(そもそも、こんなのにシビレルのはおかしい!?)   

        

     

 ここの交点は x=1 とx=1.14251…、そして面積は S=0.00995…ですと。(by Wolf)

(OEISにはない、、、たぶん)

 

【2024.01.27 訂正です】

  計算(記載)マチガイの様でして、正しい面積は

      S=0.00026 29…

  のようでした。(やはりby Wolf)

 

≪4≫  お次は著名グループからの例で、

    

とy=0とのあいだの、わずかな領域についてです。

     

 8-2=6次関数風ですが、べたっとしているところの感じが分かりにくいので、縦軸を100倍!に伸ばしてみましょう。

    

 目視でピーク値が約 0.003の二等辺三角形とすると、その面積は0.0015。

正確には、22/7-π=0.00126… (OEIS A003077) となりまーすと。

 

ja.wikipedia.org

 

≪5≫ さて、ことしもあっというまの12月となっていますが、今年の私的ビッグニュースは、、、

 1.アリス谷村新司さんの死去。

     他のアーティストへの提供曲にも、好曲多数あり。

     山口百恵:私の試練、シモンズ:ふりむかないで 等。

     かぐや姫松山千春吉田拓郎とともに、my四天王でした。

 2.サッカー日本代表の好調。

     いまW杯やったら、優勝するんじゃないの?というくらいの好調ぶり。

     ですが、まずは堅実に2026年は、best8か4を目指しましょう。

 3.WBC日本優勝。

     決勝の大谷さん、準決勝の村上さん、サイコーでした。

 

 異常気象のせいか、突然寒い冬が来た感じで、愚生も本日インフルエンザ注射をしてもらいました。

 皆さまも、健康にはご留意されますよう。

 

 

 

【続】グラフ海峡 なつ景色

≪1≫ 「ほとんど整数」(または、ほとんど一致)という数学分野では、そうなる理由が数学的にある程度説明できるものと、そうではないものとに分類できますよね。

 前者の説明できる例は有名どころでは、

    

これは、小学生の必須暗記数値 π≒22/7 から出発して、7π≒22 として、まずはこれのcosをとる。πの奇数倍は、いつもー1。いっぽう22ラジアンといいますと、

    

つまり、22ラジアン=22×180°/π=1260.507...°=180°×7+0.507...°となり、これは実質180.507...°となるので、これのcosはといえば-1よりは少々プラス目となりやして

    と。

この表現だけでも十分かと思われますが、算数の約分みたいに偶数22は半分にできるよねーのということで、はじめのsin表示に行きつきます。このほうが精度もアップしてほとんど整数の選手としては主流となっています。

 他方、説明が見つかっていないという有名例は、

    

ですね。また、これが指摘されたのは 現代数論の三天王「スローン、コンウェイプルーフによって 1988 年頃別々に」(WikiMathWorldなど)というところもジワリます。ここいらは、「おそらくオイラーも気づいていた」んでしょうが。

 さて、前置きが長くなりましたが、前回のグラフでの海峡風接近例で、そうなる背景の説明がつかないものかどうなんか、探ってみたというご報告となります。

 

≪2≫ まづは前回の最初の例;

    

    

    

というものですが、これは単純にy=1となるのが、y1ではe、y2ではπとなっていて、そもそもがeとπが近い!ということに起因しているようです。

 ということで、y1-y2が極小となるxは、x=2.77...で、ちゃんとe以上π以下でした。

 どなたか高名な方がおっしゃてましたが、こんな超弩級の数学定数2つがこんなに近い場所にあるってこと自体が非常に神秘的だって。まさにそのとーり!

 

≪3≫ 次に2例目;

    

    

    

これもx=1での値を考えてみますと、y1のほうはy1=lnΓ(1/2)=ln(√π)

=(1/2)lnπ。この lnπというのは、eを何乗したらπになるかという数なので、1よりは少々大きいハズ。なのでその半分y1は0.5より少々大きいハズ。(実際には約1.144÷2=0.572)

 他方、y2=cos1というのは、cos60°=1/2なので1ラジアン≒57°からして、1/2より少々大きいはず。(実際にはcos1=0.540...)

 ということで、x=1での値がそもそも近いという、結果から追っかけたゴリ説明が可能なんです。こちらも最小点はx=1.08...で、1のお近くでした。

 

≪4≫ 3例目

    

    

    

 同様にx=0でのそれぞれの数値を見てみますと、y1の方はζ(0)=-1/2だから

y1=sin(-1/2)で、先ほど同様-1/2ラジアンでのsinとなると-30°よりちょい浅いので、-0.5よりちょいプラス目。(実際は-0.479...)

 他方y2は、ζ(0)=-1/2そのもの。

 従いまして、x=0での値が近い。で、最小点は今回は0からは少々ずれますが

x=-0.315...となるのでありました。

 

≪5≫ 作為的にこしらえたのもではこんな例もゴザイマス。

    

    

    

これは一目瞭然、2π、4πといった偶数πでどんどん接近していきます。これは、

それぞれの性質;ζ→1とcos≦1から明らか(1/Γ(x)乗は、より接近させようとの仕掛け)なので、イマイチ面白みに欠けるものであります。最小点は、おそらく偶数πよりも少しだけ進んだところにあるのでしょうね。

 さて、こんなのはどうでしょう。

    

    

    

これはちょっと数値的な説明も出来ていません。数値自体は、

    

    

となっていて、前回の最小記録1000分の6を更新しているのですが。

 

≪6≫ とまぁ、Geoさんにキテレツ風ないろんなグラフを描いていただき、それを眺めては勝手によろこぶという高尚で無意味な戯れで残暑を凌いでおる次第であります。

 今回の最後に、はじめの例のその次の煎じものとして、近似分数π≒355/113から

    

をあげておきましょう。9の9乗風の表記は、9が9個続きますよという岩波公式の表記を流用しています。

 355ラジアンとは、すなわち180°+0.0017...°とのことで、この少々のところが9個の9のモトになってるようです。
 それにしても、この程度の数字の個数でもって、9個までイケてるって、これはなかなか美味な感じがしています❣

 

【9/4 補遺】

 πの近似分数を、さらに酷使しますと

    sin22  +  tan22=0.00000  03467  51280...;

    sin355+tan355=0.00000  00000  00013...

などというのにも出会えました~。

 

≪参考資料≫

ja.wikipedia.org

 

mathworld.wolfram.com

 

https://m.media-amazon.com/images/I/51uyGXQe31L._SX338_BO1,204,203,200_.jpg

いっくん、数学クラスタが集まって本気で大喜利してみた、2021,KADOKAWA

p119  ほとんど整数の数をいえ

グラフ海峡 なつ景色

≪1≫ 地理好き・地図好きのひとにとっては「海峡」というのはシビレル対象ですよね。海が狭くなっていて、こっちの陸とあっちの陸が海で隔てられ、陸は見えてはいるんだけど、そこの人とはすぐには会えない話せない。

 グラフソフトGeoさんと戯れていますと、そんな海峡に似た、すれすれに近づいている2つのグラフに遭遇できるときがあります。本日はそんな観察例を3つほど紹介したいと思います。

 

≪2≫ はじめは、ごく身近な2つの関数

    

    

が接近している様子からみていきましょう。いつもお世話になっているものですね。

 えーと申し遅れましたが以下のサンプルすべてに言えることで、区間は限定、つまりほかの箇所では交わっていたりします。それと、近寄り具合を表す「距離」は、y軸方向に測定したもので、「最短距離」というわけではございません。悪しからず。

    

xが3の少し手前あたり(もしや、eでは?)の地点で、急接近しています。この場合の対象の区間は(1、5)とでもしておきましょう。このあたりに接近してみますと、

    

    

という感じです。いつものようにカタカタっとやりますと、最接近のxとそのときの接近ぐあいΔyは

    

    

となりまして、残念ながら最接近点xはeではなかったものの、この接近具合にまずはヒトしびれするというものです。

 

≪3≫ 2個目のはこんなもので、そのグラフからみていきますと、こんな具合で

    

    

ふーっとながめるだけですと、x=1付近で接しているんじゃ?ともみえますが、実態は

    

で、かすかに離れている。このグラフの式はと言いますと、

    

    

で、少々作為的な側面もございますが、さきほどと同様に最接近点とその接近具合を求めますと

    

    

となる次第であります。

 

≪4≫ ほんじつ最後の出し物は、

    

    

というもので、高校数学オーバーエイジ枠のゼータ ζ さんに登場いただいたものとなります。

     

-1から0のあいだで、急接近箇所が観察されます。拡大しちゃいますと、

     

となっており、

    

    

ここの接近具合が1000分の6なんていうのは、なかなか美味なもんだと一人しびれておる次第であります。

 

≪5≫ 青少年のみなさんのためになればということで、こういうものの探し方を記しておきましょう。

 まずは、グラフソフトGeoさんとかで、いろんな組み合わせのグラフを描いてみる。(数学的な意味とかはそっちのけでガンガン組み合わせてみる!)

 次に、接近してそうな2つy1,y2を選ぶ。

 そして、差関数y=y1-y2の極小点xとか極小値Δyを求める(ここは、Geoさんに書かせるもよし、Wolfさんでビブン=0を解いていただくもよし。)

 そして、検算も。(これはWolfさんとかがお手軽?)

 むかしは、電卓しかなかったので上記のような観察行為は殆ど不可能だったんですが、いまはフリーソフトがいっぱいありますので、受験勉強なんかはほどほどにして、どしどし描きまくって楽しんでほしいものですね。

 

≪6≫ 海峡の反対語?は地峡というらしいですが、具体例としてはスエズ運河だとかパナマ運河になっていたところといったほうが有名で分かりやすいと思います。(地峡がすべて運河化されてるわけではありませんが😅)また、「水道」や「瀬戸」ということばが海峡の同義語だというのも、今回の記事作成ではじめて知った次第であります。

 ギネスには「世界一短い海峡」として土渕海峡(どふちかいきょう)が登録されてるとかで、その距離は、なんと10メートル以下と。

ja.wikipedia.org

 海峡のというのは、演歌などでもしばしば題材になったりで、目には見えるのだが接しきれないというその微妙なプラトニックなところが、特にニッポン人の感性に訴えるものがあるものと思われます。石川さゆりさんはうたいます。

   ~ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと・・・(津軽海峡冬景色より)

嗚呼、わたしたちはニッポンに生まれてよかったです。

Z&G、負の領域からの拾い物

≪1≫ なつ野菜の帝王なすびなどにある、ヘタ。ふつうは食べずにポィしてしまいますが、料理好きの方はうまく味付けして調理されるようですね。

www.kyounoryouri.jp

実数観察数学の世界でも、負の数はあつかいが面倒であったりで敬遠されることが多いですよね。

 本日は、みんなの大好きなZ:ゼータ関数とG:ガンマ関数を素材にして、オーソドックスな調理と、あとヘタを使った調理とを紹介したいと思います。

 

≪2≫ まずは、素材のまんまの

    

は、こんなものでした。水色がゼータさん、赤色がガンマさんなのは、ご承知のとおり。

    

ここでの定番マターとして、2.5あたりにある正の交点をサーチしにいくと

    1=2.50916…。

なぜか、wolfさんでもそっぽをむかれ、oeisさんにも登録なし~と。

 グラフでは負のほうは-5あたりまでしか表示していませんが、この先、双方ともぐちゃぐちゃっとしていてお互いの実数交点もぐちゃぐちゃとしていて、交点はどっさりありそう、です。

 

≪3≫ これでは、なすびをナマでかじっているみたいですので、ちょろっとだけ塩をふる感じで、絶対値にして対数をとるってすると、少々オモムキが変わり、こんなかんじ。

    

正の範囲での交点が、一個ふえましたので、これも目視観察でさぐってみると

    2=0.54179...。

これも、x1とおなじく市民権なし。。。

 2個ともメジャーな関数ですんで、上記のx1,x2くらいは、oeisさんあたりにはあってもおかしくねー感じがするのですが、(そして、すでに何百人かのかたが投稿されてる感じもするんですが。ボツ?)どうなんでしょうね、このあたりのウラ話って。

 

≪4≫ それはともかく、上記≪3≫のすがたをながめていますと、なんだかもっと負の方もみたくなってきた訳です。湾曲した山や谷がなんとなくキレイに並んでいるようで、ヘタのほうも捨てがたいんじゃないのって。

 そこで、-100あたりまで表示してもらいますと、

    

ムムム、プラスマイナスは違えど同じような放物線的形状の曲線で∞の彼方へ発散していくようであります。(双方とも本来、ハゲシイ振動発散のハズですが、Geoさんの描画は縦の直線状発散のところの描画は割愛されてるようです。が、逆にこれはこれで見やすかったりシマス😅)

 青のゼータのほうはそのままにして、赤いガンマのほうにみりん、しょうゆをテキトーな目分量で加えるがごとく添加してみますと、

    

    

ってなな感じの式になり、これをGeoさんに描画いただきますと、

     

    (-150あたりで描画停止)     (-140あたりのズーム図)

と、このあたりじゃオーバーラップしちゃったという次第です。

 これは、まぁ、-150程度までのソフト描画姿ですので、ホンマにこうなのか?とか、もっとさきまでもこうなのか?というところは観察できていません。

 

≪5≫ とまぁ、ふだんは踏み込まない負の領域、なすびでいうヘタの部分で、こんな現象がありましたよーというご報告となります。

 ところで、ヘタの漢字ってこんなんですって。

    

帯広とかのオビと似ているんですが、そっちは

 帯

なんですって。漢字の世界でもオーバーラップしそうなのはいっぱいありそうです。

 

本日のご静読、ありがとうございました。

 

ハイラ-他「解析教程」にまなぶ

≪1≫ 連日猛暑とのことで、こういう場合は実験数学・観察数学で涼むに限るのです🌞

本日は解析関係のテキスト;ハイラ-&ワナー「解析教程」から材料を持ってまいりました。この本、やや変わった本で、愚生は本屋さんでみて初見で即買いしました。(¥3000×上下2冊+税)

最近は新装版が出ているようですが、じぶんの持っているのはシュプリンガー版。

これの方が、表紙がすきだなー。

     

 これ持っておられる諸兄も多いかとおもいますが、下記のような特徴があるとのことですね。

    ・「歴史」を大切にされている(英語のタイトルがAnalysis  by  Its  History

      実際の歴史は、「具象→抽象」なんだ!と。賛成!

    ・新旧の図が多く、しかも精緻。らんまん/槙野万太郎もまっさおか。

    ・文体が「デスます」調で、訳者蟹江先生の訳注や設問解答も丁寧です。

    ・さらに、文字が大きい。(←これはおおきい)

といった感じで、愚生的にはビブンセキブンを習った進歩的な中高生あたりが、読み物としてみてくれたらいいなぁと思っています。夏休みの読書推薦図書にぜひ!

 

≪2≫ さて、この本にはもうひとつ、ほかの本には見られない特徴がありまして、それは「立体視」の図が採用されているという点です。

 「立体視」とは、左右2枚に並べられた微妙に異なる平面の図を、目の焦点を調節すれば立体に見えるんです!というあれで、よく新聞や雑誌にあるものです。

 原著が1995年3月とのことですので世はwin3.1時代、まだグラフソフトなどはマイナーな時代?このせいか、こういう図を採用してでも青少年に分かってもらいたい!という熱意のようなものが感じられ、ジワリます。

 という折角の立体視図ですが、やはり見えるようになるには少々コツが必要。なおかつ、ほかの人がいるところでは出来ない。(←これもおおきい)

というわけで、おなじみの3DーGeoさんに登場いただき、何例か現代風の図を見ていきましょう。いずれも下巻の「第Ⅳ章多変数の微積分」のなかで登場します。

 

≪3≫ はじめの例は、p169に登場する下記の関数のものです。

(使用する文字はxyz、θ等に変更しています)

    

    

    

曲面は原点付近を指でつまんだような形状ですが、テキストにある通り、極座標を導入すると、

    

となって、    

    ・原点を通る直線上では、原点を除き、角度θのみに依存する定数。

     (つまり、この曲面は線織面(せんしょくめん)だ。)下図の青線参照。

     【誤記訂正です】

     図の紫線の角度は、π/2ではなく、π/4=45°でした~😓

     

    ・原点では、角度θにかかわらず、いつもz=ゼロ(定義より)。

    ・角度θが、特別に0やπ(=180°)のときは、つまりx軸やy軸では

     z=0となり、つながっている。が、ほかの角度では途切れている。

    ・全体的には、原点1点のみでつながっているが、その上下はスリットが

     入ってる感じ。これは、全体としては不連続なんだ。

    

     (θが0のときは、横線zが全体的に0となって、この箇所では連続となる)

 これは、「どこでも偏導関数が存在する(が)不連続関数」の例としても採用されています。(p191)

 

≪4≫ もひとつは、歴史的にも有名という「極小ではない停留点をもつペアノの例」として挙げられているものです。(p225)

 

    

    

(原点を直視できるように、xyzの正の領域から見ています。)

 

これの特徴は、

    ・原点を通る、あらゆる直線的な方向の垂直カット(刃物aを使用)では

     極小値となる。

    ・ところが、放物線状の垂直カット(刃物bを使用)では、逆に

     極大値となる。

    ・よって原点は、変則的な(ひねくれた)「鞍点」といえる。

     (最初のカットだけでは、判別できない場合があるよーとの警告例)

      

なお、この例は確か岡部恒治先生「反例からみた数学」でもとりあげられていたかと。愚生が見たのは、これまた半世紀近くまえの図書館でしたが。。。

    

 

≪5≫ 以上、良書から2例をピックアップさせて頂きました。こんご、図を回転したりして動画にできたらもっと見やすくなるかと思っています。

 ところで、むかしの方法で「動画」となると、パラパラマンガ方式、、、

ですが、さすがにこれを採用した数学書にでくわしたことは、愚生の範囲では、ございません。