≪1≫ 連日猛暑とのことで、こういう場合は実験数学・観察数学で涼むに限るのです🌞
本日は解析関係のテキスト;ハイラ-&ワナー「解析教程」から材料を持ってまいりました。この本、やや変わった本で、愚生は本屋さんでみて初見で即買いしました。(¥3000×上下2冊+税)
最近は新装版が出ているようですが、じぶんの持っているのはシュプリンガー版。
これの方が、表紙がすきだなー。
これ持っておられる諸兄も多いかとおもいますが、下記のような特徴があるとのことですね。
・「歴史」を大切にされている(英語のタイトルがAnalysis by Its History)
実際の歴史は、「具象→抽象」なんだ!と。賛成!
・新旧の図が多く、しかも精緻。らんまん/槙野万太郎もまっさおか。
・文体が「デスます」調で、訳者蟹江先生の訳注や設問解答も丁寧です。
・さらに、文字が大きい。(←これはおおきい)
といった感じで、愚生的にはビブンセキブンを習った進歩的な中高生あたりが、読み物としてみてくれたらいいなぁと思っています。夏休みの読書推薦図書にぜひ!
≪2≫ さて、この本にはもうひとつ、ほかの本には見られない特徴がありまして、それは「立体視」の図が採用されているという点です。
「立体視」とは、左右2枚に並べられた微妙に異なる平面の図を、目の焦点を調節すれば立体に見えるんです!というあれで、よく新聞や雑誌にあるものです。
原著が1995年3月とのことですので世はwin3.1時代、まだグラフソフトなどはマイナーな時代?このせいか、こういう図を採用してでも青少年に分かってもらいたい!という熱意のようなものが感じられ、ジワリます。
という折角の立体視図ですが、やはり見えるようになるには少々コツが必要。なおかつ、ほかの人がいるところでは出来ない。(←これもおおきい)
というわけで、おなじみの3DーGeoさんに登場いただき、何例か現代風の図を見ていきましょう。いずれも下巻の「第Ⅳ章多変数の微積分」のなかで登場します。
≪3≫ はじめの例は、p169に登場する下記の関数のものです。
(使用する文字はxyz、θ等に変更しています)
曲面は原点付近を指でつまんだような形状ですが、テキストにある通り、極座標を導入すると、
となって、
・原点を通る直線上では、原点を除き、角度θのみに依存する定数。
(つまり、この曲面は線織面(せんしょくめん)だ。)下図の青線参照。
【誤記訂正です】
・原点では、角度θにかかわらず、いつもz=ゼロ(定義より)。
・角度θが、特別に0やπ(=180°)のときは、つまりx軸やy軸では
z=0となり、つながっている。が、ほかの角度では途切れている。
・全体的には、原点1点のみでつながっているが、その上下はスリットが
入ってる感じ。これは、全体としては不連続なんだ。
(θが0のときは、横線zが全体的に0となって、この箇所では連続となる)
これは、「どこでも偏導関数が存在する(が)不連続関数」の例としても採用されています。(p191)
≪4≫ もひとつは、歴史的にも有名という「極小ではない停留点をもつペアノの例」として挙げられているものです。(p225)
(原点を直視できるように、xyzの正の領域から見ています。)
これの特徴は、
・原点を通る、あらゆる直線的な方向の垂直カット(刃物aを使用)では
極小値となる。
・ところが、放物線状の垂直カット(刃物bを使用)では、逆に
極大値となる。
・よって原点は、変則的な(ひねくれた)「鞍点」といえる。
(最初のカットだけでは、判別できない場合があるよーとの警告例)
なお、この例は確か岡部恒治先生「反例からみた数学」でもとりあげられていたかと。愚生が見たのは、これまた半世紀近くまえの図書館でしたが。。。
≪5≫ 以上、良書から2例をピックアップさせて頂きました。こんご、図を回転したりして動画にできたらもっと見やすくなるかと思っています。
ところで、むかしの方法で「動画」となると、パラパラマンガ方式、、、
ですが、さすがにこれを採用した数学書にでくわしたことは、愚生の範囲では、ございません。